空間工房森田

岐阜県の一級建築士事務所・工務店

コラム

無垢材について

ひとつの建築が完成するまでには、たくさんの材料が使われます。
私たちのこだわりの中心にあるのが「無垢な素材をつかうこと」です。

◆天然素材のかたまり=無垢材

「無垢材」は平たく言うと天然素材のことで、例えばフローリング材であれば、木目のプリントされた合板(ベニヤ)や、表面だけ天然木を薄くスライスして貼り付けたようなベニヤでできたフローリングではなく、厚みのある天然木材そのもののことを指します。どこまで切っても同じものが出てくる、金太郎アメのようなものです。

私たちは仕上げ素材と構造材には天然素材である無垢材のみを使うように心がけています。
断熱性能、良好な経年変化、構造強度の長寿命化が見込まれるからです。そして何より美しく、表情豊かなところも気に入っています。

◆高性能な天然木

木材の場合、樹には水を通す「道管」とよばれる細かいストローのような繊維がたくさん通っています。
建材として使用するために乾燥させると繊維質な木材は空気を多く含むため、断熱効果が高くなり、また湿気を吸放湿してくれるので空気を心地よい状態に保ってくれます。

これが人工的な建材だと、表面部分やすぐ数ミリ下が樹脂の接着剤でできているため、湿度の調節機能が無く、硬い樹脂部分は断熱性能にも劣ります。
断熱性能は基本的には比重の小さいもの、つまり軽いものほど高くなります。(※グラスウールは重いほど断熱性能が上がります)杉の無垢材などは周辺環境の熱の影響を受けづらく、一方で樹脂などの固く重いものは表面の熱の伝わりやすさが高いため、寒いところでは冷たく、暑いところでは熱くなります。足が常に触れるフローリングにはもともと樹脂は不向きなのです。

天井や壁の仕上げにも無垢材を使用します。

板張りや、しっくい・珪藻しっくいの塗壁を採用したり、クロスを用いる場合も珪藻土を吹付けたクロスを使います。
湿気を調節してくれるので空気環境が良くなり、カビや結露のリスクが大きく軽減されます。また無垢材はとても良い香りがします。
一般的に用いられるビニールクロスは空気環境のことを考えて、使わないようにしています。

◆みな表情の違う天然素材

天然木の一枚板や東濃ひのきの大黒柱など、家のシンボルになるような木材などは、個性的な表情も楽しみの一つです。
無垢材は工業製品と異なり、同じ素材でもひとつひとつ見た目が異なります。私たち人間のように、皆顔立ちが違うのです。
木目がまっすぐのものもあれば、柔らかく曲がったもの、節のあるもの、変わったところにこぶのあるもの。
それぞれが育った山の地質や水質、周辺の木々の様子、日当たりや風の向きなどがその表情をつくります。
樹種が違うと色や年輪の付き方も違ってなお面白いです。こうした樹の成長の様子を楽しむことも、無垢材の良さだと思います。

◆経年変化の美しさ

そして人工的な建築材料は往々にして劣化します。それもあまり良い劣化の仕方ではありません。
見たことがあるかもしれませんが、南の掃き出し窓の近くの床が合板(ベニヤ)でできていると、ボロボロになってめくれてしまいます。
湿気にさらされる部分に張り合わせの材料を用いると、水分を含んで盛り上がり、柔らかく黒ずんできます。

一方で、無垢材は経年変化がとても美しいです。
色艶が増してきて、例えばひのきだとコガネ色に変色していきます。もともと樹が持っている脂分が成熟して、深みのある色合いになります。
この変化はまるで革製品のようなもので、完成したときが最良の状態ではなく、成長し育てていく楽しみがあります。

◆無垢材のメリットとデメリット

もちろん無垢材にはデメリットもあります。
断熱性能の高い「杉」は一方でとても柔らかいという性質があり、床材に使うとすぐにキズがついてしまいます。
ですから強いご要望が無ければ、私たちは杉材は壁か天井にしか使いません。

経年変化で動きの大きい材料、雨や湿気に弱い材料…様々なデメリットもある中で素材の特性を良く理解し、適材適所に採用することで、その素材の魅力が発揮されるのだと思います。
私たちはその魅力がより豊かな生活と長寿命な建築につながると考え、そうした素材を標準仕様としてご提案いたします。

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