空間工房森田

岐阜県の一級建築士事務所・工務店

コラム

余白部分のデザイン

今回のコラムは、住宅空間にはどんな機能が必要か?というお話です。

現代の住宅は主にLDKと個室、その他玄関や収納・水回りという構成が一般的です。
この形式を専門的には「nLDK」と呼び、戦後住宅から今日まで細かな変化はあるものの、核家族世帯にとって主流の住宅形式として流通しました。

◆多様な暮らし方の時代に

しかし昨今、家族形態の多様化が進み、現代の家族像には調和しないのではないか?という議論が建築の専門分野ではなされています。
Wifiによって家のどこにいてもネット環境に接続でき生活時間もまばらになってきている中で、それぞれの家族個人個人が、好きな時に好きな場所にいられるような生活空間が必要なのではないか?ということです。

◆「ひとり」と「みんな」の間の空間

家族の距離感は人によって、また日によっても違います。
皆で夕食を食べるときもあれば、喧嘩をすることもあります。と思えば、一人で読書したりゲームをしたりすることもあるでしょう。
喧嘩のあとに同じリビングのソファでテレビを見ていたくないけれど、離れて寝室に閉じ籠るというのも何だかさみしい時もあります。

そこで私たちは個人の居場所とみんなの居場所、そのちょうど間の場所づくりを考えています。
日常生活の些細な変化。その変化を受け止める中間領域を考えてみましょう。

つくりかたはそこまで難しくはありません。
今まであった空間を、「少しだけ無駄に広く」してみるのです。

例えば2階の廊下幅を少しだけ広くすると、スタディスペースが出来上がります。
親子でケンカしたときに、吹抜けのあるリビングの音はよく聞こえるけれど、何となく離れた場所にあるスペース。

例えば階段下にゆとりを与えると、デイベッドコーナーのできあがり。
ごろんと横になって皆と一緒の空間で本を読みたいけれど、リビングのテレビの音からは遠ざかりたい時。

◆「無駄」なスペース

これらは平面図で見ただけでは一見「無駄」に見えるかもしれません。明確な「機能」が無いからです。
しかし出来上がってみると、何か普通の家とは「奥行き感」が違うのです。

普段の些細な心の変化を受け止めるゆとりを「ほんの少しだけ」用意しておくと、生活がより豊かに、多様になっていくのではないでしょうか。

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