空間工房森田

岐阜県の一級建築士事務所・工務店

コラム

“小さな居場所”づくり

今回はちょっとだけ分かりづらい、「設計」のお話です。

建築を設計する際にまず取り掛かるのが、建物の大体の大きさを見越すことです。
敷地条件やご予算、ご希望からおおよその建物の「ボリューム」を想定して面積を割り振るという手法で、一般的に設計士が広く使う手法です。
「延べ床〇〇坪」とか、「個室6帖間」などという言葉は聞いたことがあると思います。

◆「数字」と「感覚」の違い

私たちもボリューム算定はもちろん行いますが、一方で、「小さなご要望」をたくさん集めて家をつくる方法も考えてみましょう。

「ゴルフクラブを磨く机が土間に欲しい」「子どもや友達の髪をカットする美容ルームが欲しい」「庭を見ながら引きこもって読書がしたい」「夫婦でケンカするときは頭を冷やすためにベランダに出てケンカをします」「ハンモックを吊るしてバーベキューがしたい」「勉強するときは何となく話し声が聞こえていた方がいい」

今まで私たちにいただいた様々なご要望ですが、ひとつひとつにイメージがくっついてきているご要望だとお分かりでしょうか?
「個室6帖間」という表現では足りない、空間の性格のようなものが一緒になったご要望は、私たちにとってとても重要です。

◆小さなきっかけから全体を設計する

こうしたご要望は「ご家族ごと」のみならず、そこに住む「ひとりひとり」皆違った希望があるはずです。ご主人の、奥様の、お子様の、その人のためだけの空間があるのです。
皆異なる個性が一緒になって住むわけですから、それぞれが欲しい特徴的な部屋や空間を組み合わせて大きな建物をつくるイメージで考えてみることも大切です。

そうすると全く違う個性の空間をつなぐにはどんなつなぎ方が良いのか、その関係性を考えていくことになります。
これはボリューム算定とはまた逆方向のアプローチで簡単に描けるプランではありませんが、よりその人の性格に迫るプランになっていきます。

余談ですがスタジオ ジブリの宮崎駿監督は、主人公の服装を決めてからから映画全体のイメージを膨らませていくことがあるそうで、そうした部分的なところから全体の構成を決定していくという設計方法は、建築設計ともどこかつながっているように思います。

これらの希望は設計士には分からない要素ですから、施主様からお話しいただかなくてはいけません。
家づくりを考えるときに、とっかかりは「どんな風に住みたいか」「何をしたいか」です。
いろんな情報を集める中で、一般的に使われる面積や数値の表現が身についてくるものですが、初心に立ち返って、皆さんが思い描いていた本当の理想を教えてください。

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